HoneyWorksの世界を読み解く～プリンシパルの君へ自己解釈～

この「主役」とはただの主役のことではありません。バレエ団のトップに立ち、主演を務める人のことを「プリンシパル」*2と呼びます。*3
プリンシパルは、ただ主役を務めればなれるものではありません。簡単に言ってしまえばオリンピック開会式の旗手です。レジェンドだと思え。ジャニーズでプリンシパルを決めるなら間違いなくマッチだぞ。とにかく、常に主役。何があっても主役。いついかなる時でも主役。その人が現れた瞬間その人が主役になる。主役しかやらない。

もう、それはそれは凄い人のことなんですプリンシパルって。小さい頃からバレエを習っていて、何度もコンクールで入賞しても、海外で通用する日本人ダンサーはほんの一握り(最近は結構増えました)。その中でプリンシパルになれる人って、じゃあ何人なのというくらい。
例としてイギリスのロイヤルバレエ団を挙げます。世界トップクラスのロイヤルバレエは、団員100人に対してプリンシパルは16人。多いように思えるかもしれませんが、ロイヤルバレエ団に入るには、それはそれは大変な道のりです。11歳から18歳の間に世界中から1000以上もの応募がある中からオーディションに受かって世界一お金のかかるロイヤルバレエスクールに入学し毎年の進級テストに合格しバレエだけでなくきちんと勉学にも励んでも入団できるのはわずか3名程度(ここまで一息)。…え？は？無理くね？？ローザンヌ *4で入賞する方が楽な気がしてくるよ金銭面も考えると。そうやって選ばれた100人の上位15％ってどんな身体能力してんだよ。やべぇよ。なお余談ですが、2016年に2人の日本人男女ペアが、ロイヤルバレエ団のプリンシパルに昇格しています。はあ、すご。

日本の小さいバレエ団だったら、もちろんもっと簡単にプリンシパルになれるかもしれません。それでも、地元のバレエ教室で一番上手いくらいじゃ、プリンシパルにはなれない。まじで。

めっちゃ話が脱線した。そんな「プリンシパルの君」に贈る、一曲なんです。

最高最大の物語真っ白な世界
ここから始まる何を描こう

最初の小瀧くんのソロ。もうこの物語は「最高最大」と決められています。当然です。プリンシパルが最低最小の物語を演じてどうする。ただ、今は真っ白なキャンパスです。さあどうしよう、と、描き手は悩みます。この描き手は、プリンシパル…まだプリンシパルとは言えないかもしれませんが、その人とは別人。言わば物語の脚本家であると言えるでしょう。

最高最大の物語カラフルになれ
大人は見えない夢の地図
最愛を探す旅走り出したら
ここから始まる君の世界

1サビです。真っ白な世界だった最初、Aメロで落ち込んでいる子を見つけます。この子に素直でいて欲しいので、ストレートに「好き」と伝え、脚本家は自分の作る物語に引き込みます。自分と恋に落ちる、相手を主役にした物語。その瞬間、物語の世界を真っ白から「カラフルに」彩っていくのです。もちろんその世界は脚本家がこっそりと生み出したものなので、外野(＝大人)には見えません。テーマが恋の物語は、脚本家の中で一直線に進みます。でも主役は、あくまで相手。脚本家は、彼女を相手にした物語にしたいんです。

1番Aメロで、

物語主役は君で
どんな話を作るの？

脚本家が主役に訊ねます。「どこに行きたい？」「何がしたい？」「どんなご飯が食べたい？」こんな質問の連続で、引っ込み思案だった主役も、少しずつ自己主張ができるようになっていきます。

最高最大の物語わがままになれ
誰にも消せない夢の地図
散々な一日も笑い飛ばそう
涙は似合わない君の世界

主役の彼女に、わがままになれと要求します。カラフルに塗り描いてきた脚本家の世界。きっと丁寧に、色を塗ってきたことでしょう。パレットを押しつけ、どんな色でも君が塗っていいんだよと筆を持たせる。

いくつもの恋が生まれて
いくつもの恋が眠って
君は誰かに恋してる？
僕は君に恋してる

ここで脚本家は考えます。たくさんの恋が芽吹き枯れていく中で、「ねえ、君は誰かに恋をしているの？」
今まで自分の物語の主役にするためにと、相手と恋を育んできたはず。でも「僕『は』君に恋してる」のです。相手は、他の誰かを好きになってしまった。それでも、脚本家は相手のわがままを許します。相手の選んだ道です。自分の恋も生まれて、今眠りかけている。そして

旅は続く　傷付いても
遠回りが近道になる

と、相手と自分の物語の結末を、最後まで見届けようとするのです。

最高最大の物語カラフルになれ
大人は見えない夢の地図
最愛を探す旅走り出そうよ
無限に広がる世界へ

さあこの物語、もっとカラフルに彩ろうと、脚本家は声をあげます。1番サビで走り出したはずの「最愛を探す旅」は一度リセットされ、主役の相手に世界は広いと伝える。

最高の物語幸せになれ
知らない扉も恐くない
最愛を探す旅息を切らして
世界を楽しめ君は主役

物語を彩ろうとしてきた脚本家は、相手に幸せになって欲しいと願います。それこそが「最高の物語」であり、この物語のハッピーエンドだから。物語に自分が関わらなくなってしまったことで、「最高最大」には手が届かなくなってしまったかもしれません。自分はあくまで脇役で、相手が主役なのです。相手は旅の途中で、自分以外の知らない人とまた恋を生むはず。でも自分の作った物語の中では、君が主役なのは変わらない。脚本家の中では、主役はこの子以外には存在しないのです。例え自分が将来どんな人と結ばれようと、主役を務められるのはこの子だけ。相手は誰と恋をしても紛れもない主役、つまり、「プリンシパル」である。そんな「プリンシパルの君へ」贈る曲。

優しくあたたかく未来へ送り出す、と曲紹介にもあるように、この曲は「好きな相手の新しい恋愛の背中を押す」曲でした。

え、HoneyWorksさん最高。それを歌っているジャニーズWESTも最高。

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