その瞳の夢はなんですか

彼等の望む先のステージを共に見たい

2013年12月31日の私から、2023年10月18日の私へ。

デビュー発表に悲しんだ20141月のことを、昨日のように思い出せる。

 

私は友人と年越し参りに神社へ行っていて、境内で並びながらガラケーの画面を見つめていた。小さなガラケーが映し出すワンセグ放送で、嵐担だった友人とセクサマを歌いながら、関係者席のちびーずに向かって走り出すふまけんを眺めていたものだ。

 

カウントダウンの瞬間は飛び跳ねて「地球にいなかった!」だなんて言って、シャッフルメドレーにどぎまぎして。チャンカパーナを踊っていたらお参りの順番が来たので、ケータイをしまった。

 

事は私がお参りを終えて、呑気に振る舞いのおしるこを飲んでいる間に起こっていた。

 

じゃあ冬休み明けに学校でと友人と別れ、家に帰った明け方2時頃。

 

神社で貰った蜜柑を剥きつつ見る、カウントダウンコンサート。ワンセグの小さい画面では見れなかった表情や汗の1粒まで見える。やっぱりこれを見ないと年を越せない、年越しはジャニーズカウントダウンコンサートだ。

 

毎年関西Jr.コーナーがあったから今年もあるかな。またやんややんややるのかな。淳太くんはきっといるだろう。エイトの何を歌わされるだろう。いや、2013年は関西ジャニーズJr.初の映画があったじゃないか。もしかしたら主題歌のNOT FINALかも……いやいや、さすがに地上波のJr.のコーナーでそこまで出しゃばらないか。やっぱり先輩の曲を無難にカバーしてくるか。

 

セクゾの録画パフォーマンスが終わって、画面が切り替わって。

 

「僕達から、重大発表がありまぁす!!」

 

と、照史くんの元気な声が飛び出してきた。

 

続くしげちゃんの声は「CDデビューをすることになりました」というものだった。

 

しげちゃんを真ん中に、シンメのB.A.Dがいる。わ、ばどと7WESTがデビューってことは、全ツのこと考えると濵ちゃんもいるな。関西バチバチに仕切ってたばどはまが抜けて、トップの7WESTが抜けて、なにきんが関ジュのトップ!?えーっ、やってけるの!?

 

なんて思う暇もなく、淳太くんの言葉が続く。

 

「メンバーは、重岡、桐山、中間、そして小瀧くんです!!」

 

当時まだ17歳の高校生だった、客席ののんちゃんの顔が映る。大きな模造紙に、間に合わせのように手描きで書いた「グループ名は ジャニーズWEST4」の文字。

 

あれ、足りない。

 

ずっと年下の関西Jr.が緊急選抜とか、ぽっと出の関東Jr.と抱き合わせとか、そういう話もない。

 

聞いたこともない「ええじゃないか」なんて曲を歌っているのを見て、何が起きているのかを理解できなかったことを覚えている。

 

B.A.Dはいい。やっと2人揃っての、念願叶ってのデビューだ。私の好きな淳太くんが、彼の好きな長年の相棒と一緒にデビューする。嬉しくて、誇らしい。

 

それで、散々B.B.V10人括って打ち出して、ばどはまなんて言ってたじゃん。濵ちゃん、どこに置いてきた?ベテはどうするの?

 

問題は7WESTにも、だ。彼らが4人になってから、かみしげ/ツインのシンメを刷り込まれてきた。もちろん当時のしげちゃんの人気は凄かったし、のんちゃんの新規も増えている印象はあった。それでもりゅかみが、2人に劣っているとは1度も思ったことがなかった。てか、流星なんてついこの間まで地上波ドラマ出てましたよね?

 

テンションを上げてええじゃないかと歌っている4人がだんだん滑稽に思えてきた、深夜2時半頃。1人でテレビの前で、正月早々に泣いていた。

 

ああ、デビューってこういうものだ。

 

最近はえびキスがそのままのメンバーでデビューしていたから忘れていたけれど、いままでのJr.はそのままのメンバーでデビューする方が有り得ないことだった。

 

全部ジャニーさんの気まぐれで、ジャニーさんの思いつき。今までのグループは解体されて、お気に入りのメンバーと売れ筋のメンバーとの抱き合わせでデビューする。バレボ組なんてその最たる例。そっちの方が、普通。

 

「初売り行かないの?」

 

「行かない、もういい」

 

ソファで不貞腐れる私を前にして、母は呆れた顔をした。

 

まだみんながみんなTwitterにいた頃じゃないから、レポは全部強火のオタクのブログ経由だ。三が日の開けた城ホあけおめコンは地獄絵図だったとか、SHARKの選抜はその伏線だったんじゃないかとか、とにかく色んな憶測が流れていた。

 

吐きそうだった。

 

デビュー発表ひとつで、こんなにも苦しいなんて。

 

いや、でもきっと、淳太くんが決めた道だから。B.A.Dがいるなら、大丈夫。

 

割り切って進むしかできない彼らと、置いてきぼりにされるオタクとの狭間で、全部を飲み込むしかなかった。オタクにできることは、現状を飲み込むことと自担を応援することだけなのだ。

 

あけおめコンの地獄絵図も抜けぬままに「なにわ侍 東京見参!!」の告知がされた。これが後の「なにわ侍 ハローTOKYO!!」である。申込期間も1週間くらいしかなく、もちろん当時受験勉強真っ只中だった私は、母親から申し込みを止められていた。歳がバレる。

 

そしてこの発表と同時に、何故かジャニーズWEST4から「ジャニーズWEST」と名称変更されたことが発表された。該当担らが「もしかして」と淡い期待を抱いたことは言うまでもない。

 

長い長い、1ヶ月。迎えた25日、「なにわ侍 ハローTOKYO!!」初演時に、日生劇場前にはジャニーズWEST4人が拳を突き上げたポスターが掲示される。

 

初演の幕が開ける。

 

4人のなにわ侍というアイドルグループのデビューから、何かがメンバーたちが新たな色を探して、7人になる物語。

 

重岡大毅桐山照史中間淳太小瀧望

 

2部のパフォーマンス前に、照史くんの声でアナウンスがあった。

 

「そして」

 

円盤で擦り切れるほど聞いたこの言葉。毎年25日に再生して、何度も安心していたこの言葉。

 

神山智洋藤井流星、濵田崇裕。この7人で、僕達はCDデビューすることになりました」

 

2014年初演を終えた日生劇場。客席を出るとそこでは、ジャニーズWEST7人で拳を突き上げているポスターが飾られていたという。

 

たくさんのレポを読んだ。ワイドショーも全部録画をした。4人では嫌だと思っていたのは、私たちだけではなかった。彼らも同じ気持ちだった、それだけで充分だったのだ。

 

4人と3人と、衣装も歌割りも格差があった。デビュー曲はファン投票で決めます。そんなことも言っていた。ファン投票なんてものはどこにも無かった。あべのハルカスでデビュー記者会見をして、ヘリポートの屋上で暴風に吹かれながらデビュー曲となる「ええじゃないか」を歌う彼らをワイドショーで見た。忍ジャニ参上!!とかいうわけのわからん映画も見た。馬鹿みたいに前売り券も買った。最後にジャニーズWESTが歌う主題歌のバンザイ夢マンサイ!のPVが流れ、意味もなくメンバーが増殖することに死ぬほど笑った。シングルは4形態全部買わされたし、なんならMY BEST CDとかいうジャケットとCP曲を自分でカスタムできる意味不明なCDもあった。メンバー個人のジャケット×CP曲が2曲の、全14形態である。しかもおひとり様2枚までしか申し込めない鬼畜仕様だったのに、全部揃えて並べるとCDの背の部分にWESTの「W」の文字が7色に輝いた。通常販売とMY BEST CD、全部で18形態。どうかしている。どうかしすぎている。せめて自力で14形態揃えられるようにしてくれ、頼むから。

 

そしてデビューシングル「ええじゃないか」が発売され、一週間も経たない426日より「なにわともあれ、ほんまにありがとう!」が公演開始となる。この4ヶ月であまりにも色々とありすぎである。なにわともあれ、の一言でまとめてよい話では無い。

 

その後もメンバー格差をなくすために必死だった彼らは、デビュー発表から1年でその格差をほぼ完全撤廃した。2015年の正月に行われた1stコンサート「一発めぇぇぇぇぇぇぇ!」で初披露した3rdシングル「ズンドコパラダイス」から歌割りの格差はほぼなくなり、衣装もほとんど均一になっていった。1st tourパリピポ」なんて、最初からそんなものはなかったみたいに。

 

4人から7人になった、オタク視点の事実はこう。当時はまだまだ10代半ばのクソガキだったのと、もう9年も前のことなのであくまで主観として捉えて頂きたい。本人視点のお話は、2018年のMyojo 1万字ロングインタビューを参照のこと。このときに彼らは「過去を振り返るのはこれで最後」「俺たちは前しか見ていない」と語っている。

 

もう二度と悲しませないから、とも。

 

 

そして、2023年。

 

私はコロナ禍を機に抜けるように担降りし、ジャニーズを追わなくなっていた。たまたまご縁があって入ったライブ「Mixed Juice」でもなんだか疎外感を感じて、存分に楽しむことができなかった。はるか昔にワクワクして青い振込用紙を書いたファンクラブは、気付かないうちに有効期限が切れていた。

 

ジャニーズ事務所が窮地に立たされている。ジャニーズWESTという名前も、消えるかもしれない。

 

どれだけ翻弄されればいいのだろう。前しか見ていないと言っていたのに、もう悲しませないと言っていたのに。

 

何かできることはないかと、ファンクラブに入り直した。新しい会員証は2023年の1016日、ジャニーズ事務所のその名前がなくなる日に届いた。「ジャニーズWEST」と書かれた封筒のその文字に、泣きそうになった。処分していない山ほどの写真を、全部見返した。追いかけている間は淳太くんの写っているものはほとんど揃えていたので、1000枚を軽く超えていた。ドラゴンドッグなんて全員ビジュがいいという理由で、端から端まで全部買ったのを思い出した。

 

今日、ジャニーズWESTは名を変える。

 

生放送で慌ててデビュー発表をした、9年前。20131231日に、事務所に振り回されて名前を決めたあの日から。

 

20141月に、何度も何度も事務所に掛け合って7人でのデビューを決めたあの日から。

 

20231018日、10周年を目前にしてまたも事務所に振り回され、彼らの第2章が幕を開ける。

 

見届けよう。7人と、きっと気持ちは同じはずだから。